アデノイド顔貌とは?特徴や治療法、口ゴボとの違いを解説

鏡や写真を見たときに、「口元が前に出ている気がする」「顎が小さいかも…」と感じたことはありませんか。

普段は意識しにくい横顔ですが、一度気になるとずっと目についてしまうことがあります。

唇が前に出ているように見えたり、下顎が引っ込んで見える場合、「もしかしてアデノイド顔貌かも?」と不安になる方も少なくありません。

アデノイド顔貌は子どもに多く見られる傾向がありますが、大人でも起こり得るもので、症状が強い場合には治療を検討する必要があります。

本記事では、アデノイド肥大が原因となるアデノイド顔貌の特徴や原因について解説し、似た症状である「口ゴボ」との違いもわかりやすく説明します。

さらに、子どもと大人それぞれに適した治療法についても紹介しますので、口元や横顔に悩みを抱えている方は参考にしてください。

アデノイド顔貌とは?特徴と原因

アデノイド顔貌とは、鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)が肥大することにより、口呼吸が習慣化し、顔つきが変化する症状のことです。

アデノイドは鼻と喉をつなぐ上咽頭部に位置し、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ役割があります。

この顔貌は、正面から見ると面長で鼻の下が長く、下顎が小さい、唇が突出しているといった特徴が見られます。

また、横顔は上顎に対して下顎が後退している状態です。口呼吸が常態化することで、いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こすこともあり、歯並びの悪化や唇の乾燥といった症状も現れる場合があります。

アデノイド顔貌の原因!アデノイド(咽頭扁桃)肥大や口呼吸などが影響

アデノイド顔貌は、アデノイド肥大による口呼吸の習慣化が主な原因として挙げられますが、他にもいくつかの要因が考えられます。

アデノイドは2歳ごろから徐々に大きくなり始め、6歳ごろにピークを迎えるとされ、この時期に口呼吸が習慣化しやすい傾向があります。

口呼吸が続くと、唇や口周りの筋肉が緩み、顔つきに影響を与え、独特なアデノイド顔貌を形成することがあります。

また、アレルギー性鼻炎による鼻づまりや、指しゃぶりなどの癖も口呼吸を誘発し、アデノイド顔貌の原因となることがあります。

アデノイド顔貌と口ゴボの違いは?

アデノイド顔貌と口ゴボはどちらも唇が突出しているように見える点が共通していますが、両者には明確な違いがあります。口ゴボは、上下の唇が前方に出ている状態を指す一般的な表現で、医学用語ではありません。

専門的には上下顎前突や上顎前突と呼ばれています。原因としては、歯並びや顎の骨格的な問題、舌の癖などが挙げられます。
一方、アデノイド顔貌は、アデノイド肥大による口呼吸の習慣化が主な原因で、下顎の成長が不十分で後退している点が特徴です。

そのため、横顔を見たときに、アデノイド顔貌では下顎が引っ込んでいますが、口ゴボでは下顎の位置が正常であるという違いがあります。

このように、口元が突出していても、顎の状態に違いがあるため、適切な診断と治療を受けることが重要です。

「アデノイド肥大」は体に多くの不調をもたらす可能性がある

アデノイド肥大によって口呼吸が慢性化すると、いびきや睡眠時無呼吸症候群といった睡眠障害を引き起こす可能性があります。

特に小児期は鼻呼吸が十分にできないため、ミルクを飲むことにも支障をきたし、軽度の栄養障害につながることがあります。

さらに、鼻水の停滞により滲出性中耳炎になりやすく、軽度な難聴を引き起こす場合もあるため注意が必要です。

アデノイド肥大は成長とともに改善することが多いですが、中学生や高校生になってもアデノイドが大きいままだと、呼吸障害や、集中力低下による学習障害につながる恐れがあります。

重度の呼吸障害は心臓にも負担をかけ、心不全などの重篤な合併症を引き起こす場合もありますので、専門医への相談をおすすめします。

アデノイド顔貌をセルフチェックする方法

アデノイド顔貌の可能性があるかご自身で確認できるセルフチェックをご紹介します。

口呼吸の有無や、いびき・睡眠時無呼吸の症状、唇や顎、頬、鼻、目元など、顔全体のバランスをチェックすることで、アデノイド肥大が顔貌に与える影響の有無を確認できます。

口が自然と開いている、横から見たときに下顎が引っ込んでいる、顔全体が面長に見えるなどの症状が見られる場合は、アデノイド顔貌の可能性をチェックする項目として確認してください。

ただし、これらのセルフチェックはあくまで目安であり、最終的な診断は専門医による検査が必要です。

気になる症状がある場合は、自己診断だけで判断せず、専門の医療機関を受診し、適切な治療を検討することが重要です。

アデノイド顔貌を自力で治すことはできる?

アデノイド顔貌を自力で治すことは、骨格の成長が完了した大人になってからは非常に難しいと言えます。

特に、口呼吸が習慣化することで形成される特徴的な顔つきは、骨や骨格の問題が大きく関わっているため、自力で治すことは困難です。

成長期にある子供であれば、まだ骨が柔らかく、口呼吸の改善などの対策によって治せる可能性もあります。

しかし、大人になると骨格が固まってしまい、自力での改善は期待できません。

口呼吸の癖は、睡眠時無呼吸症候群や歯並びの悪化など、さまざまな問題を引き起こすため、対策を講じることが重要です。大人になってからアデノイド顔貌を治すには、専門的な治療が必要となります。

アデノイド顔貌の治療法を子供・大人別に紹介

アデノイド顔貌の改善には、子どもと大人で適した治療法が異なります。

子どもは成長期にあり、骨が柔らかいため、自力で症状を改善できる可能性もあります。

しかし、身長の伸びが止まる高校生以降の大人の場合、骨の成長が止まっているため、自力で治すことは困難です。そのため、それぞれの症状に適した診療科やクリニックを選ぶ必要があります。

以下では、アデノイド顔貌の治療法を子供・大人のケースに分けてそれぞれ詳しく紹介していきます。

子供のアデノイド顔貌治療法

アデノイド顔貌の治療とは、原因となるアデノイド肥大や呼吸の習慣を整えることを目的としています。

特に子どもでは保存的治療が多い傾向にあり、クリニックで行われる方法にはいくつかの選択肢があります。以下に代表的な治療法をまとめました。



アデノイド・扁桃の切除手術



薬で改善が見られない場合や、アデノイドや扁桃が大きく気道をふさいでしまっているケースでは、切除による手術が検討されます。子どものアデノイド肥大は高校生になる頃には自然に縮小することが多いため、大人になってからアデノイドを手術で除去するのは稀です。



口腔筋機能療法(MFT)とトレーニング



咀嚼・嚥下・舌の使い方を見直し、口呼吸を鼻呼吸へと改善していくトレーニングです。舌の癖を矯正し、顎や口周りの筋肉を正しく使えるようにすることで、子どもから大人まで幅広く効果が期待できます。アレルギー性鼻炎などが原因で鼻が詰まっている場合は、薬による治療で鼻の通りを良くすることも必要です。

歯列矯正



歯並びや顎の位置を整えることで、見た目だけでなく呼吸の仕方にも影響を与えます。

クリニックでは、ワイヤー矯正やマウスピース矯正が用いられることが多く、特に子どもではプレオルソと呼ばれる取り外し式のマウスピースが選ばれるケースが多いです。

これにより口の機能を正しく使えるようになり、自然に鼻呼吸へと導く効果が期待されます。

このように、アデノイド顔貌の改善には 手術・薬・矯正・トレーニング といった複数のアプローチがあります。

症状の程度や年齢によって適した方法は異なるため、まずは専門のクリニックで診断を受け、自分に合った治療を選ぶことが大切です。

大人のアデノイド顔貌治療法

大人になってアデノイド顔貌を治すには、原因が骨格にまで及んでいることが多く、自力で治すことは困難です。

そこで、専門のクリニックで適切な治療を受ける必要があります。大人のアデノイド顔貌の治療とは、口呼吸が原因で引き起こされた口周りの筋肉や顎の骨格的な問題を改善し、鼻呼吸を習慣づけることを目指すものです。

まず、日頃の口呼吸を改善するためのセルフケアとして、あいうべ体操やマッサージが効果的です。

あいうべ体操は、「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく開けたり閉じたり、舌を突き出したりする体操で、口周りの筋肉や舌の筋肉を鍛え、鼻呼吸を促します。

しかし、大人になってしまうと、これらの体操やマッサージだけでは骨格的な変化を治すのは難しいと言えます。

特に長期間の口呼吸によって骨格が定着してしまっている場合は、根本的な改善には至りません。

大人のアデノイド顔貌の治療は、多くの場合、歯列矯正が選択されます。

歯並びの悪さが口呼吸の原因となっているケースもあるため、矯正によって歯並びや顎の位置を整えることで、口が閉じやすくなり、自然と鼻呼吸を促します。

歯列矯正だけでは治らないと判断される場合、根本的な骨格の改善を目指す手術が検討されることもあります。

下顎の骨を前に移動させる下顎骨体移動術のような外科手術や、美容整形による治療も選択肢の一つです。

美容整形では、ヒアルロン酸やシリコンプロテーゼを注入して顎のラインを整える方法もありますが、ヒアルロン酸は時間とともに吸収されるため、継続的な治療が必要となります。

アデノイド顔貌は、骨格や筋肉の問題だけでなく、鼻呼吸の習慣づけが非常に重要です。適切な治療法は個人の症状や原因によって異なるため、まずは専門医に相談し、適切な診断と治療プランを立てることが大切です。

アデノイド顔貌の歯列矯正治療なら「全体矯正」

アデノイド顔貌の改善策として歯列矯正を検討されている方に、全体矯正をおすすめします。

全体矯正とは、すべての歯に装置を装着して歯並びを整える治療方法のことです。歯並びの改善は、見た目を整えるだけでなく、上下の顎のバランスを整え、かみ合わせの改善にもつながります。

アデノイド顔貌の原因の一つである口呼吸は、歯並びを悪化させるだけでなく、下顎の発育にも影響を及ぼすことが多い傾向にあります。

全体矯正で歯列を整えることで、口が閉じやすくなり、自然と鼻呼吸へと導くメリットも期待できます。

全体矯正の中でも、マウスピース矯正は透明なマウスピースを使用するため、目立ちにくいという特長があります。

人目を気にせずに治療を進めたい方にとって、マウスピース矯正はおすすめです。

また、マウスピースはご自身で取り外しができるため、食事や歯磨きも普段通り行えます。

歯科矯正の治療期間は長くなる傾向にありますが、目立ちにくいマウスピース矯正は、治療中のストレスを軽減することにもつながります。

歯科医師との綿密な相談を通じて、ご自身に最適な治療方法を選び、理想の歯並びと横顔を目指しましょう。

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